綾辻行人 著
若年性の認知症を患い、家族の事すら忘れてしまった母が、唯一記憶している凄まじいまでの恐怖とは?
母の病気が遺伝性のものかを調べるため、森吾は幼なじみの藍川唯と共に、母の生家を訪ねる。
しかしそこで待ち受けていたのは、母の恐怖体験の元凶とも言える出来事だった。
ホラー小説なのでしょうが、恐怖の対象は実に不明確で、それこそが話のオチになっているので仕方がないのですが、何におびえているのかまったくわからないので、実にもどかしい気分になります。
病気の遺伝を恐れているのですが、(わけあって)母の恐怖を共有しているので、それに対しても強い恐怖を抱いています。
病気が遺伝性のものかをさぐるため、幼い頃、養子にだされた母のルーツをさぐっていくわけですが、これが同時に母が抱く恐怖の正体を暴くことにつながります。このあたりの作りがとても面白いのですが、こうした本筋の展開の中に、バッタの飛ぶ音、白い閃光、惨殺される子供等、恐怖の対象を暗示するキーワードが、断片的かつ頻繁に登場し、そのたびに主人公をわけのわからない妄想の世界へと引きずり込みます。最後にそれがなんであるかがわかるのですが、ふってわいたようにトリップし、その度に意志を挫き、怖じ気づき一向に話が進展しません。
主人公が何かにおびえている事はよくわかるのですが、何におびえているのか、こちらには最後のオチを迎えるまでわからないので、感情移入できません。したがって登場人物が勝手に怖がっている様子を、ただただ見ているほかありません。これをホラーと言って良いのか、甚だ疑問ですが、やはりクライマックスで、認知症の母が唯一覚えていた恐怖の対象が何であったのかを知ると、ちょこっと涙が出そうになりました。
しかし私の想像力が欠如しているせいか、フラッシュバックの連発には、やや閉口していましました。
テーマ : 読んだ本。 - ジャンル : 本・雑誌
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